マリー
 その名前を見て、息を呑んだ。岡崎を見る。

「麻里さんとお母さんは仲が良かったの?」

 彼はゆっくりと頷いた。

 美佐と遊びに出かけたこと、彼女が病気がちな麻里を心配してよく家に顔をだしていたこと。仲の良い友達の関係が綴られていた。その中で目を引いたのが美佐が麻里に「麻里に似ている」と言い洋人形をプレゼントしたということだ。

「彼女は体が弱くてね、小学校のときも、あまり学校にも来なかった」

 楽しさをにじませる文章が悲しみに変わったのは一週間の間だ。

 楽しい文章の最後には、美佐と天体観測に行くと書かれている。

 知美はその部分を岡崎に見せ、問いかけた。

「お母さんは行かなかったの?」

「結果的にはそうだね。彼女自身も悪気があったわけじゃない。ただ、物事にはタイミングがとても大事だ。あの時も、もっと早く」

 知美には岡崎が何を言おうとしているのか分からなかった。

 彼は咳払いをして、すまないと告げる。

「白井さんは中学で陸上部に入っていた。その日は三年生で話し合って、顔を出そうとしたらしい。橘さんとの約束は夕方だから、その後、彼女を迎えに家まで行くと約束していたんだ」
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