マリー
 知美は空になったコップを受け皿の上に乗せる。

「夢を見たんです」

 知美はつい先日見た夢を彼に語って聞かせた。

 彼は悲しそうな顔をしながら、その夢の話を聞いていた。

「本当に仲が良かったよ。橘さんの人形を預けた寺に、彼女の墓があってね、白井さんは今でも橘さんの命日にはお墓参りをしていたんだ」

 あの時の妹だと言っていた彼の様子が頭を過ぎり、胸が痛む。

 彼は麻里の死をどのような気持ちで受け止めていたのだろうか。

「麻里さんの墓はここにあるんですか?」

「父親の両親の墓もあるし、いろいろなことを考えてそうなったんだ」

「命日っていつなんですか?」

「今日だよ」

 立ち上がろうとした知美を制した。

「だから今日呼んだんだ。さすがに白井さんは無理だと思うから、君が行けばいい。今日、人形も渡してくれるそうだよ」

「ありがとうございます」

 岡崎は部屋の奥から花束を白い百合の花束を持ってきた。

「これは」

「彼女の墓に供えようと思って買ってきたんだ」

 岡崎がお茶を飲み終わるのを待ち、二人は家を出た。


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