マリー
 岡崎と一緒に本堂を出ると、麻里のお墓に行く事になった。

「星のことはずっと考えていた?」

「勝手なことを言ってごめんなさい。でも、わたしが約束を叶えたら、少しは楽になるのかな、と考えたの。もう麻里ちゃんはここにはいないかもしれないのに」

「きっとその気持ちは彼女に伝わるよ」

 知美は笑顔で頷いた。

 だが、岡崎の目が墓地に釘づけになっているのに気づく。

 彼の視線を追うと、墓地には見慣れた人影がある。

「伯父さん」

 知美は思わず彼に駆け寄った。

 彼は驚いたようだが、知美の後ろに立つ岡崎を見ると納得したような笑みを浮かべる。

「少しだけ寄ってもらったんだよ。伊代達は買い物があるからと」

「そうなんだ。退院おめでとう」

 「ありがとう」といった将の目線が人形に釘づけになる。

「知美ちゃん、それ」

「お母さんの遺品です」

 将や伊代にこの人形のことを聞かれた時は、そう言おうと岡崎と相談して決めた。

 将は優しいながらも、物憂げな表情を浮かべる。一瞬、彼の口元が緩んだ。

「どうかしたんですか?」

 人形から目を逸らした彼に問いかける。

「不思議な夢を見たんだ。やけにリアルで、夢かどうかも怪しいけど」

 彼の目は知美を引き取るといってくれた時のように、儚げで優しいものだった。

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