マリー
水を汲んで岡崎に渡すと、彼は花瓶をお墓に収めた。
「その時計」
知美は左腕を掲げてみせた。
「お母さんからのプレゼントだったんですよね。伯母さんから聞きました」
「そっか。美佐も渡せて喜んでいると思うよ」
引越しの日に知美は誕生日プレゼントを二つ貰った。その一つは母が買っていたのにも関わらず、渡せなかったものだと伊代から少し前に聞いたのだ。
「岡崎さんの前でこういうことを聞くのも悪い気がするけど、本当に学校転校しなくて大丈夫?」
同じことを数日前に伊代からも聞かれた。彼女は将が夏休み中に退院できるので、しばらくは自分が引っ越しても構わないと言っていたのだ。
幼馴染が亡くなり、妹に疑惑をかけられ、両親を失った彼にとってここは住み場所ではなかっただろう。岡崎も彼を気にかけていたが、就職を機に彼が出て行くものだと考えていたそうだ。だが、将は出て行かなかった。
岡崎がその理由を将から聞いたのは少し経ってからだった。岡崎はその理由を知美に教えてくれた。
「その時計」
知美は左腕を掲げてみせた。
「お母さんからのプレゼントだったんですよね。伯母さんから聞きました」
「そっか。美佐も渡せて喜んでいると思うよ」
引越しの日に知美は誕生日プレゼントを二つ貰った。その一つは母が買っていたのにも関わらず、渡せなかったものだと伊代から少し前に聞いたのだ。
「岡崎さんの前でこういうことを聞くのも悪い気がするけど、本当に学校転校しなくて大丈夫?」
同じことを数日前に伊代からも聞かれた。彼女は将が夏休み中に退院できるので、しばらくは自分が引っ越しても構わないと言っていたのだ。
幼馴染が亡くなり、妹に疑惑をかけられ、両親を失った彼にとってここは住み場所ではなかっただろう。岡崎も彼を気にかけていたが、就職を機に彼が出て行くものだと考えていたそうだ。だが、将は出て行かなかった。
岡崎がその理由を将から聞いたのは少し経ってからだった。岡崎はその理由を知美に教えてくれた。