マリー
 まるで生きているかのような澄んだ金の瞳に、煌びやかな茶色の髪。

 知美は一瞬で心を惹かれた。

 同時に彼女がこうしたものを持っていたのに、驚きを隠せない。

 知美はその金の瞳をした人形に手を伸ばす。ビニール製の髪がちくりと知美の肌に触れた。

決して抱きしめてくれることのなかった美佐の匂いがその人形からする気がした。

 古ぼけた印象はあるが、洗えば綺麗になると思うと、その人形も玄関に置いてある段ボールの荷物の中に入れておく。


 車に乗りきらなかった知美の荷物で、後から伯父が運んでくれることになっていたものだ。

「知美ちゃん。準備はいい?」

 その言葉とともに、玄関の扉が開く。

 将は知美の目の前においてある箱に目を向ける。

「これも乗りそうだから、運んでおくか」

 彼は家の中にあがると、戸締りをチェックする。そして、二人は家を出ることにした。最後に詰めた荷物は将が抱えてくれた。
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