マリー
「出来る限りは力になるので言ってくださいね。ただどうしても役者不足なところはありますが」

 知美は岡崎の言葉に頷いた。

「いつ伯母さんと待ち合わせをしたの?」

 将は腕時計で時間を確認する。

「あと二十分後くらいかな」

「よかったらわたしが送りますよ。川瀬さんを家まで送る予定だったので」

 将は伊代に電話をする。知美は麻里の眠る墓を見つめていた。

「どうかしたんですか?」

「お母さんはここに来たことあるの?」

「ないと思うよ。美佐はずっと避けていたし、この町を出てからは、一度も帰ってきてないから」

 首を振った岡崎の代わりに答えたのは携帯を手にした将だ。

「そっか」

 知美は答えてくれた将にお礼を言う。

 彼は岡崎に断ると、その場を離れた。

 知美は一つの仮説が浮かんだが、うまく内容をまとめられずにいた。

「もう下の駐車場まで来ているらしいので」

「そうですか。下まで一緒に行きましょうか。川瀬さんはわたしが送りますよ」

 知美が困っているのを察したのか、岡崎はそう笑顔で告げる。
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