マリー
　優子が将を連れて先に家の中に入る。知美は伊代を待つ形で車を降りる。

　ポストを覗き込んだ伊代が目を見張る。そして、花柄の封筒の裏面を確認すると知美に渡した。知美は宛先を見て、誰から届いた手紙が一目でわかった。

「返事、良かったね」

「ありがとう」

　知美は笑顔を浮かべる。

　部屋に戻ろうとすると、部屋の前に優子がいた。

　知美は手紙を思わず鞄に隠し、顔を背ける。

「何か用？」

「謝っておこうと思って。ごめんなさい」

「何を？」

「いろいろ言った事。校長先生や、お父さん、お母さんから聞いたの。過去にあったこと」

　知美はどういっていいか分からずに頷いた。

「誰から『悪魔』の話を聞いたの？　この辺ではそんなに有名な話だった？」

「子供の時に何人か言っている人はいたけど、そこまでは。言いふらしていたのは前田くんのお母さんとおばあさん、あと」

　優子は唇をそっと噛んだ。
< 192 / 206 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop