マリー
「真美のお母さん。真美自体はお母さんに文句言っていたし、関係ないんだよ」

「真美のお母さんがどうして……」

 あの時のまなざしから快くなく思われているのは分かっても、発端になっているとは思えない。

「分からないけど、昔、あんたのお母さんと仲良かったんだって。喧嘩したんじゃないかって言っている人がいたの」

 彼女はもう一度謝ると、自分の部屋に消えていく。

 岡崎は優子の心境の変化を知っていたのだろう。彼らが何を語ったのかは分からなかった。




 窓を開けると、空を仰ぐ。

 空には星が瞬いている。

「外に行こうか」

 知美は人形を抱きかかえて、窓を閉めると階段を下りていく。

 まだリビングには明かりがともっている。

 知美がドアを開けると、将と目があった。

「ちょっと庭に出てくるね」

 不思議そうな顔をする将に「空が見たい」と伝える。

 知美はサンダルを履いて、庭に出る。そして、空を見上げた。

 部屋で見るよりも空が広く、瞬いている星の数が多い気がした。

「綺麗だね」

 知美は人形を抱き寄せる。

 その時、玄関が開き、将が外に出てきた。

「大丈夫なの?」

「大丈夫だよ」

 彼は知美の抱きかかえた人形を見て、目を見張る。そして、優しく微笑んだ。

「怪我がなければ、もっと見晴しのよいところに連れていけたんだけどな」

「でも、ここでも十分満足だと思います。こんなに星がたくさん見えるんだもの」

 将は知美の頭を撫でると優しい声で「そうだね」と告げた。
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