マリー
知美はあの学校に卒業まで通うことになった。二学期になり、知美の環境も随分と変わった。
学校では円満とはいかないまでも、優子をはじめとし、何人かとは会話ができる状態だ。今となっては知美に嫌がらせをする人はほとんどない。
優子の言葉を借りれば、そんな度胸のある親も、そこまでして面白がる子もいないはということだ。
ただ、優子は率先して知美をいじめていたのに手のひらを返したためか、嫌がらせをされるまではないが、何人か友達を失っていたようだ。もっとも当の本人は自業自得だと気にしていない。
二人は駐車場に戻ると、車に乗り込んだ。そして、知美は助手席に座る。
振り向くと、段ボールが三箱だけ後部座席に重ねられている。これがここにのこる美佐の荷物だ。残りは向こうに既に運んでしまっている。
彼女の荷物の分類を手伝ったが、美佐の周りには麻里を思わせるものがあの人形以外何もなかった。仲の良い二人の結末だと思うと、やりきれなさは残る。
将はエンジンをかけ、車を走らせた。
美佐が彼女の事をどう思っていたかは分からない。だが、知美にとっても麻里は友達だった。そして、夏に麻里のお墓の前で気付いた事が、美佐の荷物を整理した時に確信に変わる。全て知美の推測なので、その考えが合っているか分からない。だが、自分だったら嬉しいの一心で、勇気を込めると軽く拳を握った。
「伯父さんは来年も麻里ちゃんのお墓参りに行くの?」
「そのつもりだよ」
「その時は、わたしも連れて行って」
彼は驚いたようだが、「分かった」というと目を細めていた。