マリー
 知美は美佐と似ていると感じたことはなかったが、こうしてみると面影があるとすぐに分かる。そこには麻里の写真は当然ない。

 だが、麻里の写真自体は将に見せてもらった事がある。美佐と麻里が中学に入った時の写真だ。麻里は知美の知っている彼女より、細身で、肌が白く、天使の輪のある少女だった。

 知美がページをめくっていると、知らない人の中で見覚えのある人を見付けた。そこには古賀和子と書かれている。ふっくらとした体つきの面影は今はない。だが、口元にあるほくろと、顔つきですぐに誰かは分かった。

 知美は優子の言っていた言葉の意味を理解して、アルバムを閉じた。


 部屋に戻ると、持っていたショルダーバッグを机の上に置いた。

 そこには部屋の脇にある本棚には洋人形が座っている。

 知美は名前のつけられない人形に微笑みかけると、今度は勉強道具を机の上に出し、大きなバッグに詰める。

 そして、下に降りていく。
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