マリー
 玄関先には段ボールが三箱積まれていたが、将はリビングにもいなかった。

「置いてきたよ」

「ありがとう」

 彼女はノートを束ね、段ボールに詰めていた。

「これも持とうか?」

「これは重いから良いわよ」

 知美はソファに鞄を置くと、伊代の傍に座る。

 先程将に麻里の話題をした時に、なぜかと聞かれなかったように、伊代も将も麻里の存在を知美が知っていることは知っている。もちろん、母親と仲の良い友人としてだ。

「何で麻里ちゃんはあの二人に嫌われていたんだろうね」

 知美はアルバムの写真を思い出し、そうつぶやいた。

 伊代は困ったような笑みを浮かべた。

「嫉妬だと思うわ。麻里ちゃんを可愛いっていう人がいっぱいいたのよ。でも、そういうのを快く思わない人もいるだろうし、あの二人がそうだったんだと思う。あること、ないこと言いふらしていたのは知っていたから。それに、あの二人のどちらかが将さんに告白して振られて、その腹いせをしているんじゃないかって話もきいたことあった」
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