マリー
 知美は唇をそっと噛むと、その写真をもとに戻す。

「分かった」

 知美は母親のバッグを元に戻した。

 一通り片づけを済ませると、日が傾きかけていた。

 その時、チャイムが鳴る。

「美琴さんかもしれないわね」

 伊代がインターフォンに応じると、凛とした明るい声が聞こえた。

 岡崎の姪の岡崎美琴だ。あれ以来、彼女はわけあってこの家を何度か訪問していた。

「和室を借りるね」

「あとでお菓子を持って行くわね」

 知美はバッグを和室に運ぶと、玄関の扉を開けた。

 だが、そこには美琴ともう一人。

「知美ちゃんをもういじめてない?」

 知美が美琴の言葉にあたふたすると、優子は顔を引きつらせながらも頭を下げた。

 今日、優子は友達の家に遊びに行くといっていたが、帰ってきたのだろう。

「もうしてないよ。だいたい美琴さんが頻繁にここに来るから、誰もびびって手出ししないと思うよ」

「そうなの? わたしって有名だね」

「自覚あるくせに」
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