マリー
「優子も勉強したいなら見てあげるよ。この前、テストの点悪かったんだってね。55点だとか」

 優子は知美を睨む。

「わたしじゃないよ」

「お母さんに文句言ってやる。勉強なんて受験のときだけやればいいの」

 彼女はそのまま家の中に飛び込んだ。威勢のいい優子の声が聞こえてくる。

「上がってください」

 美琴はビニール袋を知美に差し出す。そこにはケーキの箱が入っていた。

「あとで食べようか。わたしのおごり。おじさんたちの分もあるよ」

「ありがとうございます」

 知美は少し電車で離れたところにある私立中学を受ける予定になっていた。受かるかは分からないし、知美自身そのまま上がっても問題ないような気はしていた。

 ただ、そこまで話せる人が多くないのと、伊代や将が心配していたため、二人の気持ちを汲み取り、受験を決めたのだ。優子も受けたらどうかと言われていたが、彼女は勉強が苦手らしく断固拒否していた。

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