マリー
 彼女は頷くと笑みを浮かべた。

「お腹いっぱい食べてね」

 伊代はそうつけ加えた。

 空腹には耐えられず、知美は目を輝かせて食器に手を伸ばす。

「おいしい?」

 知美は口を空にするのがもったいない気持ちがし、将の言葉にうなずくだけだった。

「僕も食べようかな」

 将は知美に一人で食べさせないためか、お腹が空いていたからか定かではないが彼も一緒に食べていた。

そんな他愛もないことにも知美は喜びを隠せなかった。

美佐は決して知美と一緒にごはんを食べようとしなかったからだ。

他の人と一緒に食べるシチューは学校の給食を思い出し、いつもよりおいしく感じた。

 知美はごはんを食べると、お風呂に案内された。

自分で洗わなくて良いお風呂は久しぶりだった。湯船も広く、足を伸ばしても余裕がある。

外見は趣のある家だが、内装は随所にリフォームがされたのか、まだ新しさを感じる部分もある。

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