マリー
 お風呂をあがると、部屋まで案内された。

部屋の前まで来たとき、案内してくれた伊代が隣は優子の部屋だと教えてくれたのだ。

悪魔と言われた言葉を思い出し、身震いする。

しかし、彼女達の娘である優子のことを悪く言いたくなかった。できるだけ不安ににた気持ちをおくびに出さないように心がける。

 部屋の扉を開けると、新品の机やベッドが目に飛び込んできた。

 そして、机の上に二つ箱が置いてあった。

「あの箱は?」

「開けてみて」

 伊代に促され、知美は箱のリボンを解き、包装を外す。

 大きな箱に入ったのは黒の薄手のカーディガンだ。そして、小さな箱にシルバーのチェーンの腕時計が入っている。

「これは」

「随分遅くなったけど、知美ちゃんの誕生日プレゼントよ」

「二つも? ありがとう」

 知美は嬉しさから笑顔を浮かべるが、伊代は少し困ったように笑っていた。

「伯父さんにもお礼を言ってくるね」

 伊代と一緒にリビングに戻る。知美はテレビを見ている将の隣に立つ。

「プレゼントありがとう」

 将はああ、と笑顔を浮かべる。

「大事にしてくれよ」

 知美は将の言葉に何度もうなずいた。

「明日は私と一緒に学校行きましょう」

 まるで御伽噺の世界に迷い込んだ気持ちになり、彼女の言葉に何度もうなずいていた。

 部屋に戻ると、ベッドに横になる。それからは何かを考える間もなく、眠りに落ちていった。
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