マリー
 知美は真っ暗な空間に立っていた。

辺りを見渡そうとしても、真っ暗で何も見えない。

それでも出口を探して彷徨っていると、その空間が光に切り裂かれる。

その強い光に耐えられなくなり、思わず両目を覆う。

だが、そんな強い光もあっという間に消失し、残ったのはほんのりと明るい光だった。

 光が弱くなったことを感じ取り、手を動かす。

すると目の前に煌びやかな色をした髪の毛があるのに気づく。

その髪の正体は金の瞳をした少女だった。その瞳を長いまつ毛が縁取っている。

透るような肌をしていたが、その唇は血色が悪いのか青ざめて見えた。

「こんにちは」

 思わず声の主を確かめたくなるような澄んだ声だった。その声には力強い意志が感じ取れる。

 彼女はにこりと微笑む。思わず見惚れてしまう程の、愛らしいものだった。

「あなたは誰?」

 好奇心から彼女の名前を問う。

「マリーよ。友達になりましょう」

 綺麗な子にそんなことを言われ、知美の心は弾んでいた。

 白く細い腕が知美に向かって投げ出される。知美が彼女の指先に触れると、ひんやりと冷たいことに気づく。

どうしてそんなに体が冷えているのかを問いかけようとしたとき、目の前から少女の姿が消えていた。
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