マリー
 リビングに行くと、味噌汁の匂いが知美を出迎えてくれた。そこには笑顔の伊代の姿があった。

「おはようございます」

 まだ夢から覚めない思いで、その匂いをかいでいた。

 そのとき、椅子と床が擦れる音が響く。音のした方向に顔を向けると、昨日見た将の娘の姿を見つける。

彼女は白のサマーニットに膝丈のデニムのスカートをはいていた。彼女は知美を一瞥すると顔を背ける。

「まだ残っているわよ」

 伊代のたしなめるような声が響く。

「いらない。こんな女と一緒の部屋でごはんなんか食べられない」

「優子」

 強い口調の伊代の声が届くが、彼女は物怖じすることさえなく、ソファの上に置いてあるショルダーをつかむとリビングから出て行く。

すぐに玄関が閉まる音が聞こえてきた。

 彼女は知美のことを思った以上に嫌っている。そんな彼女となかよくするなど夢物語だった。

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