マリー
「いい人ぶりたかったんじゃない? 身内は白井さんの家だけだし、放っておくこともできなかったのかもしれないけど」

「あんな子供の面倒なんて絶対に嫌よね。伊代さんも断ればよかったのに。でも、六年生よね。うちの子と学年が違っていてよかったわ。あんな子と同じクラスだなんて、学校に通わせるのも嫌だから。優子ちゃんは良い子なのにね」

 あんな子というのが知美のことを指しているのはすぐに分かる。

「六年何組になったのかしら。うちの子は二組なのよね」

 あの中に彼女の子供がいると知り、その言葉に胸の奥が抉られるような気持ちだった。

「心配ね。やっぱり校長に直談判しましょうよ。あんな子を受け入れるなって」

「でも、岡崎さんは誰にでも優しいからね。それにあの家に逆らうのはちょっと。白井さんの家に言ったほうが良くないかしら」

「あそこは伊代さんが」

 そのとき、知美の肩に手が触れた。

 体を震わせ、振りかえると、岡崎が立っていたのだ。

「どうかした?」

 知美は唇を噛む。
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