マリー
「わたしはこれで」

 岡崎は笑みを浮かべると、来た道を引き返した。

 その理由に気づきながらも、心に留めておく。

「学校はどうだった?」

「普通かな」

 お世辞でも楽しいや、なじめそうといった言葉を口にはできなかった。

 伊代は少し寂しそうに笑うと、知美の頭を撫でた。

「何かあったらいつでも言ってね。できる限り力になるわ」

 彼女の言葉を嬉しく思いながらも、今日、他の人から浴びせられた言葉や態度が目まぐるしく頭の中を駆け巡っていた。

 母親はなぜ、そこまで嫌われているのだろう。

 知りたいと思っても、その答えにたどり着く方法が分からずにいた。



 家に帰り、部屋に戻ろうとした知美を伊代が呼び止める。

 リビングに入った知美に、数枚の写真を差し出した。

「お母さんの写真はもう少し待ってね。でも、これが知美ちゃんのおじいさん、おばあさんだよ」



 
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