マリー
 日が落ち、お風呂に入って部屋に戻ると、ため息を吐いた。

 優子があのような発言をしたためか、優子と知美がはちあわせをしないように将も伊代も気遣ってくれた。優子と伊代が一緒にご飯を食べていたため、将と知美が少し時間をずらして食事を食べることになったのだ。

 明日、学校に行けば、また今日のような目で見られるのだろうか。

 そう思うと知美は心が重くなる。

 ベッドに寝転ぶと電気を消した。

 寝てしまえば明日の朝には少し心が落ち着くだろう。

 今までずっとそうやって生きてきたのだ。


「知美」

 微かな声が耳に届く。

 知美は記憶を辿りよせるように、その声に意識を向けた。

 月の光が窓から差し込み、部屋の中をうっすらと照らしている。

 知美はその光を頼りに声の主を探した。

 だが、誰もいない。


 夢を見ていたのだろうか。

「わたしよ」
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