マリー
「そんなことない」

「みんなも死にたくないなら、川瀬さんが修学旅行に行かないように説得すべきよ」

 笠井はクラス中に声を張り上げる。

 誰もあからさまに賛成はしないが、笠井が話すたびに知美に投げかけられる視線が鋭くなる。

 扉があき、高田が入ってきた。

 クラスメイトは各々の席に戻っていく。


 昼休みにトイレの前で湯川とばったり会う。

 彼女は知美を一瞥しただけで、特に話しかけようとはしなかった。彼女が知美の傍を通り抜けようとしたとき、知美の決心が固まる。

「あの、ごめんなさい。わたしを班に入れたことで」

 彼女は大げさにため息をつくと、知美の言葉に自らの言葉を重ねてきた。

「別に。ただ、先生に頼まれたのと、人数的に無難だと思ったから班に入れただけよ。誤解しないでね」

 彼女はそう言い残すと、足早に去っていった。
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