マリー
「美佐ちゃんは助かって、彼女のお姉さんはなくなったの。その時に、彼女のクラスメイトの多くが亡くなった。最初はみんな美佐ちゃんに同情的だったのよ。悲惨な現場を見てしまったのだから。でも、いつかその同情が憎しみに変わったの。何で彼女が生きていて、自分の子供が助からなかったのか、と」

 彼女の眼にはうっすらと涙が浮かんでいる。

「それからいつの間にか話が変わって、クラスメイトの責任は全て彼女が原因になった。それからよ。彼女が悪魔や人殺しだと言われるようになったのは。前田君の家もその一つ。両親や祖父母が姉を溺愛していて自分の娘にそう言って聞かせたの。

大切な人を失って怒りの行き場を求めていたのは分かるわ。でも、だからって当時中学生で何の原因もなかった美佐ちゃんの責任を押しつけるのは間違っている」

 彼女の絞り出すような言葉に、悔しさと悲しみが滲み出ていた。

< 96 / 206 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop