キミが泣くまで、そばにいる
1 笑っていいよ
* * *
6月。
春と夏のあいだの、やけに生暖かく、湿った季節。
わが校ではこの時季に体育祭なるスポーツイベントが催される。中間テストが終わった、このタイミングに。
あんぐりと開けた口から、お茶があふれてTシャツを濡らす。もう少しで手に持ったペットボトルを落とすところだった。
廊下に張り出された模造紙には、中間テストで上位を飾った生徒たちの名前が載っている。
「500点満点中、490点……?」
薄暗い廊下に、グラウンドの歓声が響いてくる。呆然と壁を見上げていると、後ろで扉が開いた。
「ちーちゃん、お待たせー。あれ、なに見てるの?」
ハンカチで手を拭きながら、レミが私の目線を追う。
「ああ、中間の結果かぁ。微笑み王子すごいよねー」
にこにこと笑うレミの肩を、ガッと掴む。
「490点て、全教科で4、5問くらいしか間違えなかったってこと?」