キミが泣くまで、そばにいる


「ああ、教頭先生に手伝いを頼まれたんだ」

 穏やかな表情に気持ちが緩んで、うっかりレミの存在を忘れそうになる。

 ふたりのあいだにほかの誰かがいても、先生の態度は変わらない。いつだって優しい。

「真辺さん、リレーの選手なんだって?」

 苗字で呼ばれることに違和感を覚えながら「はい」と返事をすると、先生はよりいっそう目じりの皺を深くする。

「頑張れ。応援してる」

 レミにも優しい笑みを残して、先生は廊下を去っていった。

 小柄なジャージの背中を見送りながら、レミがぽつりとつぶやく。

「ちーちゃん、佐久田先生と知り合いだったの?」

「うん、ちょっと」

 レミが続けて口を開く前に、外の歓声に混じって、集合のアナウンスが聞こえた。



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