キミが泣くまで、そばにいる
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佐久田先生は、私の家庭教師だった。
中学のときに女子バスケ部に所属していた私は、めいっぱい部活に力を注ぎ、部活を引退した時点での成績はとにかくひどいもので。
塾に行かされてもまったくついていけず、担任も匙を投げるくらいだった。
行ける高校ならどこでもいいよな、と私本人よりも志が低かった担任に失望したのは、うちの母親だ。
知紗には進学校に行ってもらうんだから、と近所のおばさんネットワークを駆使して、高校の非常勤講師であり、アルバイト先を探していた佐久田先生に家庭教師に来てもらうことになったのだ。
『はじめまして、佐久田圭です』
玄関先でそう挨拶した先生のことを、今でも覚えている。
小柄で、瞳がつぶらで、気の強いうちの母親の前に、所在無さそうに立っていた先生。
まるでライオンに睨まれたミーアキャットみたいだと思った。
そこには、塾講師みたいにギラギラした目つきも、担任みたいに諦めた暗い目もなかった。
家庭教師なんて面倒くさくて、当日まで嫌でたまらなかったのに、先生を一目見ただけで、あっさり気持ちが変わった。