キミが泣くまで、そばにいる
「セイの家が学校に寄付してる関係で、そういう情報がたくさん回ってくるんだよ。だから俺たちのグループはみんな知ってた」
非常勤講師の佐久田圭が、結婚を機に退職すること。
それを知っていたから、アカツキは言ったんだ。
――やめたほうがいい
それなのに私は、何も知らないまま、彼の言葉を突っぱねた。
「バカみたい……だね、私」
――本気だもん!
あのとき、すべてを知るアカツキに、私はなんて言ったっけ?
……思い出せない。
先生を前にしていたときの恥ずかしさはもう消えていた。
今はただ、からっぽだ。
胸に詰まっていた先生への気持ちが、炎に巻かれて灰になって、心は全部、からからにカサついてる。
「ほんと、バカみたい」
アカツキは何も言わないけど、ひとりでぐるぐる踊り続けていた私は、さぞ滑稽だっただろう。
「わ、笑っていいよ」
「……ん」
いつもみたいに、バカ笑いすればいい。笑い飛ばしてくれればいい。
それなのに、アカツキは笑わない。
じっと、私を見下ろしてる。