キミが泣くまで、そばにいる


「あ、はは。笑ってって、言ってるのに」

 自分で笑おうとして、涙がこぼれた。

 一粒落ちてしまうと、栓が抜けたみたいに溢れ出す。

「わ……笑ってよぉ」

 だってバカみたいでしょ?

 でも、私は本気だったんだ。

 本気で先生のことが好きだった。

 勉強が大変でも、嫌なことがあっても、先生がいるから頑張れた。

 先生が、優しく見守ってくれたから。


 涙がぼろぼろ落ちてTシャツを湿らす。息がくるしくて、ひくっと喉が震えた。

 濡れた頬を拭おうとしたら、右手を取られた。ぼやけた視界に、アカツキの顔が近づく。

 目元に、ふわりと唇が触れた。

 涙にキスするように、アカツキは私の頬に唇を寄せ、静かに離れた。


 温かかった。

 掴まれた手に、触れられた頬に、自分以外のぬくもりが残って、よけいに涙が出た。

 ぼろぼろと、堰を切ったように溢れ出す。

「センセぇ……」

 ぬくもりに包まれ、私は声を上げて、泣いた。
 

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