キミが泣くまで、そばにいる

 ・

 どれくらい経っただろう。
 気が付くと、私はアカツキの胸にしがみついていた。

 王子の白いTシャツは、涙と鼻水でぐちゃぐちゃだ。

「うあっ! ご、ごめん!」

 顔を上げた瞬間、至近距離で目が合う。アカツキの大きな目がきょとんとまたたいた。
 私はいまさらのように状況を理解する。

 背後には太い桜の木。
 アカツキは私を挟むように桜の幹にもたれている。壁ドンならぬ、桜ドン? 

 そして気づく。王子の左腕は、私の顔の高さで桜に伸ばされていた。まるで、校舎側から見えないように隠しているみたいに。

 私が泣いてるのを、誰かに見られないようにしてくれた……?

「あーあ、もったいない。半分以上残ってたんじゃないの?」

 ふいに微笑み王子が屈んで、地面に中身をぶちまけたピンク色の缶を拾い上げる。

「やっぱり桃だ」

「な、なに」

 含むような笑い方に戸惑っていると「別に」と小さく笑われる。

「落ち着いた?」

「……うん」

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