キミが泣くまで、そばにいる


 気持ちが静まると、急に恥ずかしくなった。顔が上気してアカツキのほうをまともに見られない。

 なにやってるんだろう私。
 学校で、しかも同級生の前で、子どもみたいに大泣きするなんて。

「戻ろう」と言われて、おとなしく王子の背中に続く。

「あ、あの」

「ん?」

 アカツキはびっくりするくらい普段通りだ。

 私のとんでもなく恥ずかしい姿を見たのに、おもしろがったり馬鹿にしたりする様子がない。

「その、ごめん、Tシャツ……」

 泣いた跡がばっちり残っている胸元を見下ろして、王子は「ああ」と笑う。

「いいよ。着替えのジャージあるし」

 中庭から校舎に入り、みんなが待っている教室に向かいながら、となりのアカツキを盗み見る。

 不思議だった。

 変なところを見られて恥ずかしいのに、なぜか心は軽い。

 ひどい勘違いをして、付き合ってる実体すらなくて、文句のひとつも言えないままフラれて、普通だったら、簡単には立ち直れないくらい傷ついているはずだ。

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