キミが泣くまで、そばにいる


 それなのに、私は今、すっきりしてる。

 どしゃ降りの雨に洗い流されたあとの、透き通った空みたいに、心がクリアになっている。

 整った横顔、鼻と顎のきれいな曲線に見入る。

 アカツキが、そばにいるから?
 私の気がすむまで、泣かせてくれたから?

 つやつやした柔らかそうな唇を見て、ふと思い出す。

 そういえば、私が泣いてるとき、アカツキの唇が――

「ああ! あっくん見っけ!」

 角を曲がった瞬間、向こうから来た女の人がアカツキを指さした。

 ゆるく巻かれた茶色の髪の女の人と、そのとなりにつやつやの黒髪を背中に流した女の人が立っている。

 ふたりの顔を見て、あっと思った。

「あれ、来たんだ」

 彼女たちを見たとたん、静かだったアカツキの表情が笑みくずれた。
 まるで条件反射みたいな一瞬の変化に、なんとなく気を取られる。

「あっくん、探しちゃったよ。アヤカも一緒だったんだけど、セイ君と連絡取れたみたいで、そっちに行ってる」

 茶髪美人と目が合って、私は会釈する。と、アカツキが私の背中をトンと叩いた。

< 127 / 273 >

この作品をシェア

pagetop