キミが泣くまで、そばにいる
それなのに、私は今、すっきりしてる。
どしゃ降りの雨に洗い流されたあとの、透き通った空みたいに、心がクリアになっている。
整った横顔、鼻と顎のきれいな曲線に見入る。
アカツキが、そばにいるから?
私の気がすむまで、泣かせてくれたから?
つやつやした柔らかそうな唇を見て、ふと思い出す。
そういえば、私が泣いてるとき、アカツキの唇が――
「ああ! あっくん見っけ!」
角を曲がった瞬間、向こうから来た女の人がアカツキを指さした。
ゆるく巻かれた茶色の髪の女の人と、そのとなりにつやつやの黒髪を背中に流した女の人が立っている。
ふたりの顔を見て、あっと思った。
「あれ、来たんだ」
彼女たちを見たとたん、静かだったアカツキの表情が笑みくずれた。
まるで条件反射みたいな一瞬の変化に、なんとなく気を取られる。
「あっくん、探しちゃったよ。アヤカも一緒だったんだけど、セイ君と連絡取れたみたいで、そっちに行ってる」
茶髪美人と目が合って、私は会釈する。と、アカツキが私の背中をトンと叩いた。