キミが泣くまで、そばにいる
「向こうのいちばん右に座ってる短髪は渡部大地(わたべ だいち)。
1年8組。身長182センチのバスケ部。あだ名はジャイアント紳士」
星野彗の視線を受けて、大地くんがひらひらと手を振る。
地毛なのか色素の薄い茶色の短髪と爽やかな笑顔が印象的だ。
「よろしく知紗ちゃん。ていうかセイ、そのあだ名、はじめて聞いたんだけど」
紳士な大地くんを無視し、星野彗はくいっと顎をしゃくった。
「で、となり。真ん中であぐらかいてるチビが圷永和(あくつ とわ)。
ダイチと同じ8組。長所は明るいところ。短所も明るいところ。あだ名はオモチャのおさる」
「誰がおサルだ!!」
間髪入れずに食って掛かる彼は、ほかの4人よりも小柄だ。
やんちゃそうな八重歯をのぞかせ、キーキー騒いでいる様が、両手でシンバルを打ち鳴らすサルに見えて思わず「ぷっ」と吹き出すと、
「おいそこ! 笑ってんな!」とするどいツッコミが飛んできた。
「ていうかチビとか言うなよ! 170はあるし!」
「嘘はよくないぞトワ。ぎりぎり足りないだろ?」
「うっせ、ダイチ! 縮め!」