キミが泣くまで、そばにいる
漫才のようなふたりの掛け合いと、それを見て爆笑しているアカツキには目もくれず、星野彗の指先が向かいのベンチを示す。
「一番左に座って全然こっちの話を聞いてないのが、6組の高槻礼央(たかつき れお)。
身長176センチ。目を開けたまま寝る男。あだ名は青春ファンタジー」
「ファンタジー?」
思わず聞き返す。
紹介されたばかりのレオくんは、おにぎりを手に持ったまま頭上の木の葉をぼんやり見つめている。
「レオは空想の世界の住人だから。たぶん俺たちには見えない何かが見えてる」
「え……」
「ん? セイ、なんか言った?」
葉っぱを見ていた彼が、ふいにこちらを向いた。
5人のなかで唯一黒髪のレオくんは、とても落ち着いて見える。
「レオは妖精とか見えるんだもんな」
「見えねーよ」
「だっていつも木とか花とか見てんじゃん」
「いいだろ別に。ぼんやりしてんのが好きなんだよ」
そう言うと、彼はふたたび視線を木々に戻した。
変わってる人だな、と思った。物静かで、独特の雰囲気を持っている。