キミが泣くまで、そばにいる


 なんで、こんなに静かなの。

 心臓が鳴りすぎて、なんだか恥ずかしい。

「とりあえず――」

「え?」

 顔を上げると、目線がぶつかった。


「キスでもする?」


 一瞬意味がわからなかった。

「……ええっ!?」

 座ったまま、ずさささっと後ずさって、本棚に後頭部をぶつけた。

「いたっ」

 右手でさすりながら、アカツキを見る。

「な、なんでっ?」

 キスなんて単語が飛び出してくる意味が分からない。

 王子は真顔のまま、しれっと言う。

「いや、部屋にふたりきりだし、流れ的に」

「しないでしょ! 別にしないでしょ、ふたりきりでも! しないよ! え? しないよね?」

 両手をぶんぶん振って叫んだ。頭が沸騰して、くらくらする。


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