キミが泣くまで、そばにいる


 この人はいったい何を言っているのだろう。

 信じられない気持ちで凝視すると、アカツキの顔がふわっと崩れた。

「あはっ、知紗、首まで真っ赤だよ」

 笑われてますます顔が熱くなる。

 それはさっき玄関で見た不自然な笑い方ではなかった。

 東の空に太陽の光が差して、少しずつ木々が目覚めていくような、森が囁きだすような、柔らかな笑み。

「冗談だよ」

「ほんともう、やめてください……」

 ははっとまた笑って、王子は「音楽でも聴く?」と立ち上がった。

 すらりとした後ろ姿に、またドキッとする。
 腰の位置がおかしいと思った。アカツキは腹立たしいくらい足が長い。

 私は三角座りをして、ショートパンツから伸びた足を隠すように抱えた。
 膝に顎をのせると、自分の忙しない鼓動が聞こえる。


 微笑み王子は確かに外見がいい。

 でも、私は男子を見た目で好きになったりしない。
 あんなに好きだった先生だって、外見に惹かれたわけじゃない。

 それなのに……。

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