キミが泣くまで、そばにいる
この胸の高鳴りは不可解だ。
アカツキの振る舞いや、佇まいや、存在そのものが、私の意思を無視して感情を波立たせる。
王子の匂いに満ちたこの部屋にいると、私のほうが変な病気になりそうだよ。
ふと、机の正面に張られたコルクボードに目がいった。
メモや付箋や英単語が書かれた紙にまぎれて、AKATSUKIと象られたシルバーのチャームがかかっている。そのとなりに、何枚かの写真が貼られていた。
「アカツキって」
ノートパソコンをいじっていた彼が、「ん?」と振り返る。
「どういう意味なの?」
「え?」
「アカツキの、名前の意味」
「ああ、暁(ギョウ)ね」
マウスから指を放し、本棚から辞典を取り出す。ぱらぱらとページを捲り、私に見せるようにテーブルに置いた。
「”空が白んでくる明け方”だってさ。簡単に言えば、夜明け」
「ああ、だからか。なるほど」
「何がなるほど?」