キミが泣くまで、そばにいる


 不思議そうにまばたきをする彼に、私はクイズの正解を答えるみたいに人差し指を突き立てる。

「アカツキたちの名前、夜から朝にかけての光なんだね」

 弟とよく似た面差しの美人姉妹を思い浮かべて、つぶやく。

「暗い夜を『月の』『あかり』が照らして、東の空から『夜明け』がやってくる」

 情景が浮かぶみたいだ。


 世界が闇に沈んでも、月あかりが夜道を照らし、徐々に空が白んで、新しい朝が来る。


「すごいね。きれいな名前。アカツキって朝の光ってことなんだね」

 地球の陰だった場所が、太陽の光を浴びて、目覚める――

「私ひとりっこだから、そういう姉弟のつながりみたいなの、うらやまし――」

 私は言葉を切った。

「アカツキ?」

 彼は固まっていた。

 右手で口を押さえて、動かない。


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