キミが泣くまで、そばにいる
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西の空に、彫刻刀で切れ目を入れたような細い三日月が浮かんでいる。
外灯が灯っているけれど、あたりはまだ明るかった。
「なんか、かえって迷惑をかけた気がする」
駅までの道をアカツキと並んで歩きながら、つぶやいた。
当初は王子を送ってすぐに帰るつもりだったのに、図書館から帰ってきた朱里さんと話が盛り上がり、結局夕食までごちそうになってしまった。
「いいんだよ。朱里姉があんなに嬉しそうに家族以外の人間と話すなんて珍しいし、月乃姉は料理を振舞うのが好きだし」
「うん、もう何も食べられない」
お腹をさすると、アカツキは笑った。
「月乃姉の料理、すごかったでしょ」
ダイニングテーブルに並んだ色とりどりのお皿を思い出す。
和食中心の栄養バランスが良さそうな料理ばかりで、冷凍の揚げ物や餃子が普通に食卓に並ぶわが家とは、手の込み具合が違うと思った。
「あれ全部、月乃さんが作ったんだよね、すごいね」