キミが泣くまで、そばにいる


 ハンバーグだと思ったら豆腐だったり、唐揚げだと思ったらおからだったり、とにかく手間暇かかっていそうだった。

「月乃姉は極度の健康志向でさ。ありがたいけど、毎日豆腐とか魚とか野菜ばっかだと嫌になってくるよ。味も薄めだし」

「え、もしかして、そのせいで」

 見上げると、アカツキはふっと口角を持ち上げた。

「家があれだから、外では濃い味とか、身体に悪いもんが食べたくなるじゃん?」

「それでいつもカレーなんだ……」

「単純に好きってのもあるけどね」

 言われてみれば、アカツキはカツカレーとかハンバーグカレーとか、肉がどっかりのっているカレーを特に好んで食べていた気がする。

「カレー王子の謎が解けた……」

「はは、カレー王子って」

「そういえば、お父さんとお母さんは?」

 食卓に並んだらますます壮観だった美形姉弟を見て、私はふと思ったのだ。
 こんな子どもたちを生み出したご両親もまた、さぞ美しいに違いないと。

 それなのに、私が夕食をともにしたのは結局、井端三姉弟だけだった。

< 166 / 273 >

この作品をシェア

pagetop