キミが泣くまで、そばにいる
「父親はいつも仕事で遅いから。母親は……」
すこし間があいた。
群青色の空が、少しずつ闇を深くしていく。月のすぐそばで、星がひとつ瞬いていた。
深い青色の壁に飾られたアクセサリーみたいに、三日月と星は、空でひときわ強く輝いている。
「ちょっと事情があって、今、家に帰れないから、家事はほとんど月乃姉がしてる」
「そう、なんだ」
空に向けた目を、アカツキに戻せなかった。
いつもより少しだけ早口だったとか、声のトーンが妙に高かったとか、気になるところはたくさんあったけど、ダメだと思った。
今は、アカツキの顔を見ちゃいけない気がした。
駅が近づくにつれ、お店や通行人が増えてくる。
満腹なはずなのに、ケーキ屋の甘い匂いに鼻をくんくんさせてしまう。
雑貨店の前を通りかかったとき、ふいにアカツキが立ち止まった。
「悪い、知紗。ちょっと待ってて」