キミが泣くまで、そばにいる


 言われなくたって、自分がどの程度かはちゃんと分かってますよーだ。

 心の中だけで悪態をついていると、彼らは胡散臭い笑顔をこちらに向けた。次の瞬間、その笑みが凍りつく。

「し、失礼しました!」

「え……?」

 ふたり組があわてたように逃げ出して、ぽかんとする。

 なんだあれ。

 はっとして振り返ると、後ろにアカツキが立っていた。
 彼にしては珍しいしかめっ面が、私と視線が合ったとたん微笑みに変わる。

「知紗、お待たせ」

「あ、うん……」

「行こっか」

 数十メートル先の駅に向かって歩き出すアカツキに、急いで続いた。

 すれ違う女の人が、横目でちらちらアカツキを見ていく。
 私は隣を見上げた。日が沈むと、明るいアッシュブラウンはますます人目に立つ。

 怯えた顔で逃げていったふたり組を思い返す。

 あの人たち、たぶんアカツキを見て逃げたんだよね。

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