キミが泣くまで、そばにいる
「べつに変じゃないけど」
「笑っちゃうよね! こんな可愛いの、私に似合うわけない」
焦りと恥ずかしさで顔が引きつる。レミは大きな目をぱちくりさせた。
「なんでぇ? ちーちゃん可愛いじゃん」
「……はい?」
人の机に両肘をついて可愛らしく笑っている彼女を、まじまじと見つめる。
「レミも、目が悪いの?」
「あのね、ちーちゃん。かわいいって言葉は、今や世界標準なんだよ」
「うん?」
「カワイイ! イコール万能ほめ言葉! それは顔のつくりに限ったことじゃないの。お地蔵さんを見てカワイイって言う人だっているでしょ?」
「お、おう……」
なんだか引っかかるたとえだけど、黙って聞くことにする。
「すべてのものに対して、限りなく個人の主観が入る表現、それが『カワイイ!』」
両手を掲げ、芝居じみた仕草で宙を見つめてから、レミは私に視線を戻した。
「だからね、レミが可愛いって思ってるんだから、ちーちゃんは可愛いんだよ」