キミが泣くまで、そばにいる


 レミを凝視していると、離れた場所から声が飛んできた。

「知紗―」

「はいぃ!」

 考えるよりも先に身体が反応する。席を立ち、窓際の席に馳せ参じると、アカツキはいつもの笑みを浮かべて手を差し出した。

「ジュース、買ってきて」

「はいぃ!」

 百円玉を受け取り、廊下をダッシュして中庭を目指す。

 外に出ると、生暖かい湿った風が吹いていた。遠くの空に、いかにも雷を飼ってます、といった感じの黒い雲が見える。

 急いで自動販売機まで走り、迷わずイチゴミルクのボタンを押した。

「か、買ってきましたぁ」

「サンキュ」

 笑った顔のまま、アカツキはぽんと私の頭をたたく。

 周囲からは、フリスビーをくわえて持ってきた犬を飼い主が褒めただけに見えたかもしれない。

 でも、私の心拍数はあきらかに上がっていた。

 アカツキはイチゴミルクのパックにストローを突き刺し、取り巻き女子たちにいつもどおりの笑顔を向ける。

 頭にさわった大きな手の感触が、しばらく消えなかった。

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