キミが泣くまで、そばにいる


「知紗は?」

「へ?」

 となりから覗き込まれて、アカツキと目が合った。

「わかんないとこ、ないの?」

 まだ1問も解けていない真っ白なノートを見下ろして、私は頬を引きつらせる。

「どこがわかんないのかも、わからない状態でして……」

「どれ?」

 ぐっと顔を寄せられて、全身が固まった。

 ち、近い!

「あー、知紗はこっちの問題を先に解いたほうがいいかも」

 私の教科書をめくり、基本演習のページを指す。と、トワくんが右手を上げた。

「先生! ここがわかんねえっす!」

「ん、どこ?」

 アカツキは基本的に笑顔だ。
 『微笑み王子』と呼ばれるに至ったその顔を、横からそっとうかがう。

 今は、仲間うちで見せる楽しげな表情だった。

 勉強を教えてる最中だからか、トワくんが話を脱線させたりすると、笑いながら目尻をぴくぴくさせる。

 笑いながら怒るなんて、やっぱり器用だ。

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