キミが泣くまで、そばにいる
放課後はわりあい素の顔を見せてるようだった。
でも、笑みを浮かべ続けているアカツキは、やっぱりどこか無理をしている気がする。
「おい、忠犬がすげー見てるぞー」
トワくんにシャーペンを向けられ、はっとする。
「ん? 何、知紗。どっかわかんない?」
さっきの状態から何ひとつ進んでいない私のノートを覗き込み、アカツキが笑みを深くした。額に怒りの筋が見える。
「やります、今やります!」
あわてて教科書に向かっても、私の耳はアカツキの声を注意深く拾うし、目は勝手にアカツキの表情を追う。
どんなに意識を勉強に向けようと思っても、全然身が入らなかった。
もともと容量の少ない私の頭は、もう彼の表情でいっぱいで、それ以上のことを考えられない。
タクシーの車内で見た、何の感情も浮かんでいなかった素の顔。
部屋にいるときの、今にも泣きそうだった顔。
私にシュシュを巻きつけたあとに、ふわっと崩れた笑顔。
――かわいいよ、知紗は。