キミが泣くまで、そばにいる
頭から追い出そうとすればするほど鮮明によみがえって、顔を火照らせる。
気づかれないようそっとうつむいたとき、視界の片隅で携帯が震えた。
テーブルに置いてあったそれを、アカツキが拾い上げる。
「もしもし」
小さな顔が、一瞬こわばった。スマホを耳に当てたまま、彼は席を外す。
ダイチくんが教科書から顔を上げ「電話か」とすぐに目を戻す。
トワくんはシャーペンを動かしながら呪文のように問題文を読み上げていて、高槻くんは考え込むようにノートと睨み合っている。
誰も、アカツキの表情の変化には気付かなかったようだ。
ふと、高槻くんが顔を上げた。腕時計に目を落とし、慌てたように荷物を片付けはじめる。
「お、レオ。帰んの?」
「ああ」
カバンを拾い上げると、「じゃあ」と言って通路を走っていく。自動ドアをくぐると、外にいたアカツキと短く言葉を交わし、駅の方向に走っていった。
「高槻くんって、いつも帰るの早めだよね」
ぽかんと見送っていると、トワくんがぐでんとテーブルにあごをついた。