キミが泣くまで、そばにいる
2 何、してんの?
* * *
小花柄の傘に細かな雨粒があたる。
梅雨まっただ中の月曜日の夕方、繁華街にはたくさんの傘が咲いていた。
「知紗ちゃん、どっかでお茶飲んでいこっか」
黒髪の美女に連れられて、私は裏通りのカフェに入った。
「あー、いっぱい買っちゃったなぁ」
「すっごい可愛かったですね」
塗れないようにビニールをかぶせられた紙袋を、それぞれ抱えてくすくす笑う。
現代美術作家、喜多尾一夜の展示会に行った帰りだった。
会場脇に設営されたショップでキタイチのグッズを大量に買い込み、ふたりでご満悦というわけだ。
「雨だからかな。人が少なくてラッキーだったね」
「ゆっくり見られましたよね。もう私、あの部屋に住みたい!」
「ほんとほんと、ソファも棚も全部キタイチワールドで、めちゃくちゃ可愛かったぁ」
キタイチの話をはじめると止まらない。
お互い周りに理解者がいなかったこともあって、溜まりに溜まったキタイチ愛をこれでもかと語り合った。
「あーおかしい。知紗ちゃんてホントおもしろいね」
しゃべりすぎて喉が渇いちゃったと、紅茶を口に付ける朱里さんを、改めて見る。