キミが泣くまで、そばにいる
「ううん、知らない」
目をぱちぱちさせながら首を振る。知らない素振りではなく、本当に記憶にないらしい。
「あっくんの友達ならうちに遊びに来たことがあるかもだけど、あたしはあんまり関わらないから」
セイ……口を利いてもらったどころか、まったく認識されてないよ。
ちょっと哀れだ。あんな派手な金髪なのに、まったく印象に残っていないなんて。
あれ、でも。
引っかかりを覚えて、私は首を捻る。
セイを知らないのに、病院の名前がすぐ出るなんて、セイの家ってもしかして、ものすごく有名な病院なのかな。
ふと、朱里さんがうかがうように私を見た。
「あっくん、高校ではどんな感じ?」
「え? ああ、よく笑ってます。微笑み王子なんて言われてて」
彼女は優しげに表情を崩し、小さくため息をついた。
「学校でも笑ってるんだ、あっくん」