キミが泣くまで、そばにいる
赤い宝石みたいに艶やかなケーキに目を落として、朱里さんは続ける。
「やっぱり無理してるなぁ」
「え……?」
「昔はね、あんなふうに笑う子じゃなかったんだよ。どっちかっていうと、あたしみたいに人見知りでムスっとしてるほうが多かったかも」
「そ、そうなんですか? 学校では無駄に笑ってるような……」
「もう笑うのがクセになっちゃってるのかもなぁ。あ、でも」
朱里さんはフォークを握ったまま、まるで内緒話でもするみたいに身を乗り出した。
「知紗ちゃんの前では、素の自分を見せてる、でしょ?」
「え……?」
「このあいだ学校で会ったとき、本当に一瞬だったけど、見えたんだ」
穏やかな顔で、彼女はフォークの先を私に向けた。
「となりに女の子がいるにもかかわらず、全然表情をつくってないあっくんが」
朱里さんは、形のいい唇にいたずらっぽい笑みを浮かべる。