キミが泣くまで、そばにいる
「先生もジュース買いにきたの?」
「ああ、うん」
メガネの奥の垂れ目を優しく崩した笑顔に、きゅっと胸が反応する。
先生がそばに立っているだけで、とげとげしていた気持ちが緩んでいった。
まるで自分の部屋にいるときみたいに、心がほぐれる。
「当ててあげる! 先生はカフェラテ、でしょう?」
「うん、正解。知紗はずいぶん買ってるね。友達のぶん?」
「あ……友達っていうか……」
私は手に持った小銭に視線を落とした。
左手にはグレープの缶。自販機の取り出し口にイチゴミルク。
イケメン5人の顔が思い浮かぶのと同時に、耳の奥で笑い声が再生される。
――ご主人様、でしょ?
「先生……」
まだ具体的に何かをされたわけじゃないけれど、私の弱みを握っているアカツキは、きっとこれから何かを仕掛けてくるはずだ。
そうなったら、私ひとりで乗り切れる自信はない。
「あのね、私……」
「うん?」