キミが泣くまで、そばにいる
「うちの知紗をいじめてんのかと思って」
「殺す気かアホ!」
「え、アホ? 俺にアホって言ったの? トワが? 中間テストが壊滅的で、おそらく期末も撃沈してるであろうトワが?」
にっこりと笑った顔に凄味を帯びて、アカツキはトワくんを見下ろす。
すこし距離のある私ですらぞっとする表情で、まともに食らったトワくんは石と化していた。
「弱いものいじめはよくないよ、トワ」
固まっている彼の頭を、微笑み王子はわしゃわしゃ撫で回す。
なんだかアカツキ……感情的?
めずらしいと思いながら見ていると、
「おう、何してんだよお前ら」
廊下の向こうから、セイと高槻くんが歩いてきた。
「あ、ちィ。ちょうどいいとこに。かばん持て」
セイは当然のように自分のカバンを突き出してくる。
「な、なんで私が」
文句を言いながらも、私は受け取ってしまった。
断ろうと思っていたはずなのに、気が付いたら引き受けている。そんなことがこれまでにも何度かあった。
セイはたぶん、人を操る謎の力を持っている。